ミラドライをやっても、治療範囲が狭い場合は、脇の真ん中は治療できても辺縁のところが打ち漏れてしまい、辺縁から汗やにおいが出続け、全体としての効果が減弱してしまう場合がありえます。 当院では、脇毛有毛部をしっかりカバーする形で、ミラドライ認定医が適切なテンプレートを選択し、広範囲の照射を行い、効果をなるべく高めていきます。 ミラドライの治療の際のテンプレートの大きさはだいたいのクリニックので横幅60~80(6cm~8cmということ)、縦幅100~140(10cm~14cm)のものを使用していることが多いと思いますが、その中で「広範囲」とは何を指すのかというのはクリニックによって定義がバラバラになります。 当院の「広範囲」はほとんどの場合、幅は80幅(8cm)のテンプレートを使用しますが、クリニックによっては60幅(6cm)でも「広範囲」と呼ぶ場合があるようです。 ですので、「広範囲」とうたっていても、テンプレートの数値がいくつなのかを確認されることをお勧めいたします。 当院の「広範囲」とは、
男性の場合最大テンプレートの80x140のサイズを使うことがほとんどで、さらにおまけの照射を追加していきます。 男性の場合は小柄な方でも、同じ身長・体重の女性より脇毛有毛部が広い傾向がありますので、ほぼ全員最大サイズのテンプレートを使用することになります。
女性の場合は、体格、脇毛有毛部の大きさ、発汗テストをされた方は発汗部位の広さによって、個人差がやや出やすくなりますが、幅は80サイズを使用することがほとんどです。 男性同様最大サイズの80x140+おまけ照射になることも普通にあります。
小柄な女性の場合は80x140では胴体側が大きすぎて胸の上の皮膚を照射する形になることがあり、80x120のテンプレートにプラスして胴体側真ん中部分に数照射追加したりします。
小柄かつふくよかな女性の場合は、80x120+胴体側数照射追加し、さらに横方向に数照射追加し横幅をカバー(縦よりもむしろ横をカバー)したりすることもあり、臨機応変にお一人お一人に合わせて対応しております。
ごくごくまれに細身・小柄で有毛部が小さいの女性の場合、幅70を提案させていただく場合がございますが、患者様のご了承なしに行うことはございません。皆様に鏡でご確認いただき、範囲を決定していきます。70x120以上のサイズのテンプレートを保証しております。 一時期、日本で60幅のテンプレートの在庫が無くなったことがあり、日本の各クリニックからの発注が多いとのことでした。広範囲のミラドライをうたっていない場合はおそらく60幅で行われていることが多いのではないかと思います。(「広範囲」とうたっていても60幅のこともあるようです。)麻酔をする前には脇毛有毛部の幅が60(6cm)で入りそうでも、麻酔をすると脇が盛り上がって皮膚が伸展し、有毛部の特に横幅がストレッチしていきます。麻酔後になると横幅が60(6cm)では入らないということはよくあります。ここで60幅のテンプレートで治療してしまうと、打ち漏れ(治療漏れ)が生じることになります。ミラドライの治療はそう何回も繰り返しできるものではありませんので、中途半端なサイズで何回も受けられていると、その後重ねられない場合があります。料金が安いということで中途半端な治療を受けられて、それ以上重ねることができずに後悔されていらっしゃる方もたくさん見て参りました。最初から十分な範囲の照射をお勧めいたします。 どのくらいしっかり治療しているかは施術の所要時間でだいたいの目安をつけることができます。 当院の広範囲ダブル照射は、事前にWEB問診票にご記入いただき、ミラドライの説明動画をご視聴いただくことで、当日は施術以外の時間を極力減らしております。 当日は、 ①カウンセリング・お会計で 15分 ②位置決め、両脇麻酔、右テンプレート転写 合わせて45分 ③右ダブル照射、左テンプレート転写、左ダブル照射 合わせて2時間半~3時間 冷却入れて全部で約4時間~4時間半かかります。 (ここに発汗テストをつけるとさらに約30分かかり、約4時間半~5時間になります。) 早く終わることが良いかのような記述を見かけることもありますが、その分照射数が少ない(範囲が狭い可能性あり)ということになります。
ミラドライの製造販売元の米国ミラドライ社は、シングル照射1回の治療ではなく、シングル照射2回の治療をお勧めしています。
その根拠となる臨床研究がこちらになります。
Chang YY, Chen CH, Hui RCY, Jung SM, Yang CH. A prospective clinical and histologic study of axillary osmidrosis treated with the microwave-based device. Dermatol Sin. 2015; 33(3): 134–41. https://doi.org/10.1016/j.dsi.2014.12.008
台湾の高次機能病院から2015年に出た臨床研究論文ですが、7人のワキガの方に2回ミラドライを受けていただき、治療前後で脇の皮膚生検し、組織標本がどのように変化したかを見た研究になります。
以下論文内容の引用になります。
治療前に左脇の中央から皮膚生検
1回目のミラドライ(ミラドライは初期の頃はよくレベル3で治療されていたため、レベル3)
3か月後に2回目のミラドライ(レベル5)。2回目のミラドライも全面に照射。
2回目の治療から30日後に、治療前に生検した場所から1㎝横の皮膚を生検
脇のにおいの自覚症状も10段階のスケール(10が最も強い)で評価し前後に比較
計2回のミラドライ治療の前後の皮膚生検の組織標本を比べると、アポクリン汗腺が平均93%減少
アポクリン汗腺の細胞が分かりやすくする染色をほどこしたものの写真は以下のとおり
(茶色に着色しているところがアポクリン汗腺)
左が治療前、右が2回の治療後
2回のミラドライ治療後は、アポクリン汗腺が著しく減少しているのが認められます。
脇のにおいの自覚症状
6人がにおいのスケールで3段階以上減少(この論文内では3段階以上減少を効果ありと定義)
平均でにおいスケールが61.8%減少
脇のにおいの自覚症状減少度の図は以下のとおり
縦軸がにおいスケール(10が一番強い)、横軸は時間軸で30日後にかなり減少、90日後にやや戻っているが依然として治療前よりかなり低い。
以上で引用終わり
研究にリクルートした患者様の数は多くはないですが、全員治療の前後にほぼ同じ場所にて生検をし、実際に汗腺が減っているか確認しているという点では評価できる論文かと思われます。
同じ患者様で1回目のミラドライ後の生検もあれば尚良かったと思いますが、ともかく
2回の照射で、病理組織を見ると、かなりアポクリン腺が無くなっていることがお分かりかと思います。
「ミラドライはワキガには効かない!」などというネット上の書き込み等を見かけることがありますが、そんなことはないことがお分かりかと思います。
脇のにおいの自覚症状スケールについては、2回目の治療の前より後のほうが低く、
2回目のミラドライ後に、さらに脇のにおいの自覚症状が減っていることを示しています。
このような臨床研究結果から、米国ミラドライ社としては、シングル照射1回よりも2回をお勧めしているスタンスです。
日本の研究グループからは、ミラドライの1回の治療の中で1回照射する場合と2回照射する場合(ダブル照射)を比較している研究論文が出ています。
Hatano T, Fukasawa N, Miyano C, Wiederkehr I, Miyawaki T. Pathological changes in axillary hyperhidrosis and axillary osmidrosis induced by microwave treatment: comparison of single‐ and double‐pass irradiation. Lasers Surg Med. 2021;53(9):1220–6. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/lsm.23412
この研究論文では、シングル照射5人とダブル照射5人の治療後の生検をしたところ、ダメージを受けた汗腺はシングル照射で平均73.2%、ダブル照射で平均92.2%であり、ダブル照射のほうがダメージを受けている汗腺の率が高かったと言っています(1個の組織標本中で見える汗腺のうち何個がダメージを受けているかで計算)。
ただ、シングル照射を受けた方とダブル照射を受けた方が違う方であり、違う人の間で組織標本を比較していることで個人差の影響が入ってしまっている可能性はありえます。
また、当時はミラドライの手順が改良される前の、テンプレートの後に麻酔をやる古いやり方であり(詳細は後述)、照射漏れがそれなりに生じている可能性があり、例えばですがシングル照射の標本で打ち漏れの部分が混ざった可能性など、打ち漏れの要素が結果に影響を及ぼしている可能性はありえなくはないです。
この研究では2パスの患者様も含め重大な合併症は生じなかったとしています。
この研究論文ではダブル照射のほうがより効果的なのではないかと結論付けています。
やや説明が前後しましたが、ミラドライのダブル照射とは、ミラドライの1回の治療で照射を2回行うことを指します。「2パス」すると言ったり、「重ね打ち」と言ったりもします。 シングル(1パス)照射で起こりやすいのが、1個1個の照射の間に生じる打ち漏れになります。ミラドライの照射は施術者が思っているどおりに完璧に精密に照射できるわけではありません。まず皮膚を吸引してから照射が始まりますが、同じ吸引をしても、人によっても、同じ人でも場所によっても吸引のかかり方が変わったりします。吸引のかかり具合が場所によって変わったりずれたりしていく中で打ち漏れが生じ得ます。皮膚の柔らかさ、ずれやすさ、周りからのテンションのかかり具合など、いろいろな要素があるのだと思いますが、すごく皮膚が吸い込まれていく場合と、あまり吸い込まれない場合があります。脇も立体的ですし、斜めに皺が入っていますので、そのような構造的なものに影響されて斜めにずれてかかってしまう場合もありえます。これはやってみるまで分からなかったりします。
1パスしか照射しない場合は、1個1個の照射の間の打ち漏れが生じても、そのままで終わるということになります。そこで2パス目の照射を行うと、1パス目は打ち漏れが生じても2パス目には生じない可能性がありえ、確率論的に打ち漏れが減るのではないかということです。また、2回照射することで汗腺が受ける総熱エネルギー量は大きくなるので、より汗腺が完全に焼灼できるのではないかとおっしゃっている方もいらっしゃいます。
当院では、さらに、ミラドライの効果を高めるために1パス目と2パス目を半列位置をずらして照射しております。 これは元々他大学の先生方がやっていらっしゃる方法ですが、半列ずらすことで1パス目で1個1個の照射間に打ち漏れが生じたとしても、その部分を2パス目の照射がカバーする形になり打ち漏れをなるべく減らせられるのではないかということで行っております。
同じ場所を2回照射するより、半列ずらすほうが⼿間はかかるのですが、当院ではできる限り打ち漏れを減らしミラドライの効果を上げるために⾏っております。 ミラドライは、テンプレートの楕円の線のとおりに楕円の内側の全部が照射できるわけではありません。実際は図2のようにもう少し内側の狭い範囲しか照射できません。そのため、ミラドライ社としては、脇⽑有⽑部から1cmマージンを取った範囲でテンプレート選びをするように⾔っています。(そういう意味でも照射範囲は広範囲のほうが安⼼です。)
⿇酔後の脇⽑有⽑部が幅広い場合、最⼤の80幅のテンプレートでも⼗分に横幅がカバーできない場合があります。1パスしかしない場合、おまけの照射をしない限り端のほうは打ち漏れたままになります。ダブル照射をする場合は、2パス⽬を1パス⽬から縦⽅向に半列ずらすのと同時に横⽅向にも多少ずらすことで、横幅もカバーすることが可能になります。 (肥満の⽅などで、1パス⽬と2パス⽬をかなり横⽅向にずらさないと全部の有⽑部が⼊らない⽅は重ね打ちになる⾯積が減ってきますので、効果が少し下がる可能性がありますが、当院では可能であれば、多少横⽅向もおまけの照射をしたりして補強したりします。) ミラドライのダブル照射と言っても、2パス目は真ん中しか照射しない、2パス目はエネルギーレベルを下げる(時間は短くなるが浅めのところしか焼けない)など、2パス目が1パス目より劣る内容で、厳密には「広範囲ダブル照射」とは言えないやり方を見かけることがあります。「なんちゃって広範囲ダブル照射」です。あくまでも「ダブル照射」というのはメニュー名なのであって、照射が2倍なわけではないということらしい?のですが、患者様としては単純に広範囲を2回同じように照射してもらえると思われることが普通だと思いますので、紛らわしく、誤解を招く広告だと思います。また、2パス目は中央部分しか照射しないにもかかわらず、その旨はっきりとホームページなどに記していなかったり、患者様にお伝えしたりしないで、そのような施術が行われる場合もあるようです。本当に2倍の数を照射しているかどうかは、施術時間からご判断していただくのがよろしいかと存じます。誰もが認めるような広範囲を完全2倍のダブル照射で施術する場合、会計やお冷やしの時間も入れると4時間位はかかります。 中央だけをダブル照射する場合、当然ながら周辺のシングル照射の部分は打ち漏れが生じやすくなり、 汗やにおいに対する効果は下がると思われます。また、2回目の照射でエネルギーレベルを下げる場合は、2回目は比較的浅いところしか焼かないことになりますので、やはり効果は微妙になっていきます。 2パス目がどういう内容なのか、照射数、範囲、エネルギーレベルをしっかりご確認されることをお勧めいたします。 当院では、1パス目と2パス目は完全に同じ照射になり、テンプレートの規定照射回数の完全2倍の数を照射していきます。さらにそこにおまけ照射を追加したりしております。使用エネルギーは1パス目も2パス目もエネルギーレベル5を使用いたします。 (注:おまけ照射はチップの制限時間の3時間の間にできる範囲内になります。) ここまでたくさん照射しているクリニックは全国探してもかなり少ないと思います。 当院の広範囲ダブル照射のメニューには、発汗テストを付けることもできます。 発汗テストとは脇汗が出る場所を把握するテストで、実例はブログ1 ,2 をご参照ください。 ⼥性の⽅の場合、脇の脱⽑をされていることが多く、脇⽑有⽑部がわかりづらい場合があり、発汗テストが上⼿くいけば治療すべき部位が良く分かるようになります。 多汗の⽅で、脇⽑有⽑部より⼤きい範囲で脇汗が出ているような⽅の場合、そのはみ出ている部分も⼊れて、照射範囲をカスタマイズして照射することができたりします。 発汗テストは必ず上⼿くいくとは限らず、発汗テストを付けるか付けないかは患者様に選んでいただいております。 発汗テストは⼿間や時間がかかりますのでやっていないクリニックがほとんどだと思いますが、なるべく脇汗が出るところを把握し、なるべくそこを⼊れて照射することで治療効果を⾼めるものになりますので、当院では導⼊しております。 当院のミラドライは1回の治療で出来る限りのことをやって効果を高めたい方にお勧めいたします。